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カンボジア旅行記(アンコール・ワットの壁画から)

アンコール・ワットは、インドからカンボジアに伝わったヒンドゥー教の宇宙観を表しているといわれます。ヒンドゥー教は多神教で、宇宙を創造したブラフマー、宇宙を維持するヴィシュヌ、破壊の神シヴァの三神が有名です。ブラフマーがこの世界を創造し、ヴィシュヌは世界を維持する温和な神で、シヴァは破壊の神ですが、この破壊は想像するための破壊であるとされます。この三神は、創造→維持→破壊→創造が繰り返される世界を司っているという考え方がヒンドゥー教の宇宙観です。

日本の和太鼓にある三つ巴の模様は、陰と陽が繰り返される様子を図示しており、ヒンドゥー教の宇宙観とよく似ています。七福神の弁財天はもともとインドの川の神様でサラスヴァティであり、この女神は創造神ブラフマーの奥さんです。また、大黒天は破壊神シヴァが姿を変えているといわれ、「マハ―」とは偉大な、「カーラ」とは黒い意味でインド密教に取り入れられた際に大黒天となり、天台宗を創始した最澄によって日本に伝えられたといわれています。日本とも縁の深い神々が、ヒンドゥー教には登場します。

この写真の壁画は「乳海撹拌」の神話を表しています。不老不死の霊薬アムリタをめぐり、神々とアスラ(悪鬼)が壮絶な戦いを繰り広げて、この戦いに疲れた両者は、ヴィシュヌ神に助けを求めます。ヴィシュヌ神は「戦いを止め、互いに協力して大海をかき回すがよい。さすればアムリタが得られるであろう」と助言します。それを聞いて神々とアスラは大きな山に巻いた大蛇を引っ張って、乳海と呼ばれる海をぐるぐるとかき回します。この話は古事記にある「国生み神話」にとても良く似ていると思えます。

この壁画を見ながら、私は善と悪について考えさせられました。恐らく善と悪が戦えば、悪が勝つように思います。瞬間的な悪のエネルギーはとても強いものです。しかし、宇宙全体にはゆったりとした善への流れがあると信じます。善でなければ宇宙は維持できないと考えます。自転車を漕いでいる時に背中から追い風が吹くように、非常にゆったりと善の力を助ける方向に力が加わっているように思うのです。

ロシアとウクライナも協力して石油や穀物を生産できるようになるといいですね。少しだけ相手に譲れば、両者の生み出せる資産は倍増するように思えます。破壊の後に何かが創造される日が来ることを祈ります。

じゅこうさん 木下広志