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医療のAI化

https://vn-z.vn/threads/moi-de-doa-lon-nhat-tu-ai-artificial-intelligence-la-gi.17562/ から画像をお借りしました。

ある患者様が来院されました。鍼灸師だった私の母の患者様でもあって、私が小学校の頃から見知っている方で現在82歳、糖尿病があり、心筋梗塞、脳血栓、慢性閉塞性動脈硬化症とたくさんの病気を経験し、現在も戦っておられます。身体中の血管がいつ破裂して出血をしてもおかしくない状態です。もちろん、私には何もしてあげることはできません。

その患者様は、今回、肺がんになったという報告をしてくださいました。リンパ節にも転移し、手術はできない状態だそうです。以前に石綿を使用する仕事をしておられたので、石綿による中皮腫も見つかっており、それがガン化したのかもしれません。

ついこの間、全身麻酔による脳の血管手術をされたので、当然、肺のレントゲンを撮影しておられるでしょう。そうであれば、そのレントゲン写真で肺がんは見えていたのかもしれません。もしかしたら、脳の手術に当たる医師がレントゲン写真の読影をしたのであれば、あくまで全身麻酔に耐えられる状態かどうかのチェックだけをしておられ、また肺の専門医ではなかったので見逃したのかもしれません。ご家族はそれに怒っておられますが、私はちょっと違った視点から考えてみたいと思います。

肺がんが見つかって手術ができたとして寿命はどれほど延びたでしょう。手術ができたとして本人の苦しみは、著しく減っていたでしょうか。そう考えれば今回、手術ができなかったとしても寿命を全うし、苦しみがなるべく少ない方法が選択できたのかもしれません。これは、それぞれ個人の価値観が違うため、正解はありません。

これから医療にはAIが活用されるようになります。ある内科クリニックにはHPに「胸部レントゲン写真に「AI読影」を導入いたしました。これにより医師単独で診断する場合と比べて、検出率が9.95%向上します。安心して受診ください。」と書いてあります。何の検出率かは書かれていないのですが、おそらく肺がんや肺気腫などの肺病変だと思われます。私が肺がんの診察に行くならこのような病院を選択するでしょう。今回の患者様ももしかしたら、レントゲン写真をAIによる再チェックをしたのではないかとも考えます。

AIによるレントゲンの読影精度はすでに人間を超えているようです。近い将来に、血圧や心拍数、心電図、血中酸素飽和濃度、睡眠時間、無呼吸症候群などは、Apple watchのようなデバイスで24時間観察され、すでに血糖値などで行われている自宅での血液検査で検査数値は管理され、トイレでも尿や便の検査が自動的に行われるようになります。

プライマリケアといわれる初期医療では、AIによる受診、AIによる薬の処方が行われます。薬も印刷用インクを薬原料に変えたプリンターによって各人の体重や年齢、症状に合わせたパーソナルデータによる最適化が行われた医薬品が印刷されます。この対応で病気などの問題が無くなれれば医師の出番はありません。

専門医にかかる時にはAIによって考えられる病名が挙げられ、医療ミスは圧倒的に減少すると思われます。医師の役割はいわゆる外科手術に代表される、器質的な修復に特化されることになるでしょう。白内障の手術や心筋梗塞の血管へのシャント、骨折の修復など、人間だからこそできる処置に特化されます。外科的な手術をする医師のとの連携もAIがやってしまいますので地域の小さな診療所は必要無くなってくるかもしれません。

もちろん、医師の負担も減ります。たくさんの勤務医がいる大きな病院で計画通りに医療提供が進みます。個人で開業している産婦人科や小児科では医師の疲労が大きかったですが、代替の効くコワーカー(同僚)がいる大きな病院の効率が上がります。軽微な病気を見逃さない優秀なAIによって、誤診率の低い医療が提供され、問題があれば大きな病院へ紹介、大きな病院も軽度な病気の患者で混雑していることもありませんので、待ち時間なく医療を受けることができます。

患者の負担も減ることになるでしょう。ここまでのAIによる医療提供には、ほとんどコストがかかっていないので軽度な病気に対する医療は無料で提供されるかもしれません。年間40兆円を超える医療費は減少し、その経済効果は年金額に上乗せされることになるでしょう。医療機関に行くことも減り、高齢者は町へ出かけて商店街やショッピングモールの消費が伸び、経済が潤うことになるでしょう。

心筋梗塞やクモ膜下血腫、解離性大動脈、自殺、脳血栓などたくさんの病気は、Apple watchなどのデバイスで管理し、異常があれば、正しい診断と心理的ケア、外科的処置によって完全に回復し、本当の天寿を全うできるでしょう。緊急時には救急車も自動的に呼んでくれるかもしれません。

医療サービスの費用対効果の分析では「QALY(Quality-adjusted life year)」という指標が用いられます。QOL(quality of life:生活の質)は有名なのでご存じの方も多いと思いますが、QALYは、QOL×生存年数となります。例えば、肺がんの手術によってその後の生活が酸素ボンベを使うことが必須となり、外出できなくなったとすれば、QOL(0.5)×2年生存で、QALYは1です。手術をしない選択をして1年生存した場合と同じ数となります。

この数値化の問題は、ひどいケガや病気で運び込まれる救急医療への評価が軽症の病気に比べて低い点と余命が短い高齢者に不利である点にあります。高齢者になったらQOLと生存年数のどちらを優先するかは、個人によって価値観は違うので、一般化はできませんが、自分が高齢者になった時に、どちらを優先するか考える必要がありそうです。

マイナンバーカードと医療保険証の紐づけが問題となっていますが、医療情報や医療検査結果、レントゲンやMRIなどの画像情報が共有されていないための重複撮影、重複検査、重複処方の排除によって高齢者の薬害が減少し、医療費の無駄遣いの解消、医療情報共有が誤診の予防に役立つことは間違いないと思います。

そのような世の中になった時に、私たちのような補完代替医療である鍼灸師がどんなことができるのかわかりませんが、手による施術はAIと置き換えにくく、その価値が認められるのではないかと考えています。

私はその患者様にどう声をかけるべきか迷いました。結局、「生きている間は元気で頑張りましょう。」と言いました。本人はどのようにとらえてくださったでしょうか。

じゅこうさん 鍼灸師 木下広志