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じゅこうさんにおける腰痛患者様への施術の考え方

痛みの情報サイト「疼痛jp」から画像をお借りしました。https://www.toutsu.jp/Pain/Zakotsu

5月に入り、腰痛の患者様がたくさんお越しになっています。私が腰痛への施術が得意だとまでは申せませんが、腰の痛みといっても、痛みの発生源によって施術方法はずいぶん変わります。当院での考え方だけは知っておいていただきたいと考えてブログを書きました。

腰痛はとても危険な病気から発生していることがあります。Red Flagsとも呼ばれる危険な腰痛には、ガンなどの悪性腫瘍(骨転移を含む)、化膿性脊椎炎、内臓疾患や解離性大動脈瘤など血管からの痛みもあり得ます。冷や汗が出るような痛み、日常生活に影響する強い痛みの場合、安静にしているにもかかわらず発作的に発生する痛みなどでは、医師の診察を先に受けることが大切です。医師は何もしてくれないと患者様が言われることがありますが、この命に関わる危険な病気を見分けることは、医師の重要な業務です。

さて、一番多いのは腰付近の筋肉の痛みです。これは農作業や普段しない身体の動きによって発生し、この場合、筋膜リリースといった筋膜連結の走行(経筋と言ったりもします)に沿った筋肉への施術でかなり早期に治ってしまいます。結果がすぐに出るので、我々のような鍼灸師や柔道整復師にとって患者さんに喜んでいただけることの多い腰痛です。ただし、筋力の弱さなどが筋肉のストレスとなって痛みが発生する場合、その筋肉が強化されなければ完治とはならないので、完全に治すには日常生活の改善(運動療法)が必要かもしれません。

鍼灸院である当院では対応できませんが、筋肉の痛みにはロキソニンやボルタレンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs : Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)が有効と言われています。これらはプロスタグランジンと言われる炎症物質を合成させないようにすることで、局所の炎症を抑えます。プロスタグランジンには胃の粘膜を保護する作用もあるので、胃潰瘍などの副作用が発生することがあります。短期的な使用で常用しなければ問題ないと言われますが、ボルタレンやインドメタシンが坐薬の形で使用されるのは、この副作用を少しでも抑える意味もあります。(薬を飲み込めない年齢の子供への対応や熱さましで使う時に嘔吐に対応する意味もあります。)

次に坐骨神経痛が発生している腰痛があります。これは腰部椎間板ヘルニアに代表される症状ですが、椎間板ヘルニアは20代に一番多く、高齢者になると起こらなくなってきます。椎間板は年齢と共に老化し、椎間板の高さが低くなり椎間板にはヘルニアになるほどの体積がなくなります。患者さんの食いつきが違うので、私はいつも女性のおっぱいに例えて説明します。若い人の胸は弾力もあって前に張り出して、神経も圧迫されます。年を取ると垂れ下がって全体に薄くなります。万葉集に「垂乳根の」という枕詞がありますが、これは母親の意味だそうで、母親になるような若い年代に椎間板ヘルニアからくる根性坐骨神経痛は発生します。垂れ下がったヘルニアは神経を圧迫できません。

以前に勤務していた整形外科では、院長が椎間板ヘルニアの手術を得意としていましたが、術前、術後の補助をしている際に、手術中の患部を見せていただいたことがあります。真っ白な神経線維である坐骨神経が炎症を起こして薄いピンク色になっていました。2021年に椎間板ヘルニアのガイドラインが改訂され、手術は、緊急性を持つ神経麻痺(おしっこやうんこが出ない)や我慢できない痛みなどに対して、短期的には効果がありますが、長期的には強い有意差はないとされているようです。

※腰痛の原因 参考文献(厚生労働省:腰痛対策)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d_0001.pdf

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021(改訂第3版)

https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0017/G0001277

高齢者の坐骨神経痛は、椎間板がつぶれた後に坐骨神経の通り道が狭くなり、圧迫を受けて発生することが多いようです。よく高齢者の腰痛で脊柱管狭窄症と言われたりしますが、外側型と言われる脊柱管狭窄症や椎間板症では、椎間板ヘルニアと変わらない坐骨神経痛の症状が現れることがあります。また、椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症が合併して発症していることもあるようです。当院では、このタイプの腰痛にいわゆる整体といわれる背骨と骨盤(仙腸関節)の動きを良くするように関節包内運動を回復させる施術を行い、同時に坐骨神経経路に鍼灸施術を行います。

坐骨神経痛は背骨にある神経の通り道で神経が圧迫を受け炎症を起こします。ある程度は、SLRテスト(Straight Leg Raising Test)によって確認することができます。仰向けに寝て膝を伸ばしたまま下肢を上げていきます。神経ストレッチテストというのですが、腰のところで坐骨神経が足側に引っ張られスライド(1.5~2センチ程度動くと言われています)するので、炎症部位が刺激され、痛みが神経圧迫部に出ます。慢性的になった坐骨神経痛であれば、神経の通り道で癒着を起こしていることもあるので、その場合は積極的にストレッチして、動きを出していきます。また、大腿や膝裏が痛いのは体が硬いからかもしれませんし、梨状筋症候群と言われる臀部の筋肉によって神経が圧迫を受けることもあります。その場合は筋肉へのアプローチになるので我々の得意分野です。

私の師匠である整形外科医は、椎間板ヘルニアに関係する上記の①SLRテスト、②ストレートバック、③下肢筋力低下の3つの症状を重要視しておられました。私もこの3つがそろっている症状で、まだ医師の診察を受けていなければ、いったん医師の診察を受けることを勧めており、紹介状を書いて医療連携もしています。

その他にも、長期にわたる腰痛で慢性疼痛化したものや生理周期に一致した後腹膜の炎症など、鍼灸院や整骨院で対応できる腰痛にも種類があり、それに応じた施術方法があります。また、症状は弱くても医療連携して危険な病気を鑑別しておくべきこともあります。症状や不安が強ければ、まず医師の診察を受けて、それから来院されても鍼灸院の施術が手遅れになることはありません。当院へはいつでも気楽にいらしてください。

当院での施術の効果については、あまりに長文になってしまったのと、患者様の情報をブログに書かせていただく許可をいただくので次回以降のブログに挙げさせていただきます。