このように書くと、「一番のフェイクは伝統医療でしょう!」と言われそうです。確かにそういった一面を伝統医療は持っています。伝統医療の定義は、近代医療以外の医療とされているのでとても範囲が広く、加持祈祷からそのあたりに生えている野草を薬とする医療も含まれており、鍼灸師・柔道整復師である私がみても、それはどうかな~と思うものも含まれています。加持祈祷で病気や心の悩みが解決されることもあれば、お金だけ取られて何も変わらないこともあるかもしれません。
確かにケガをした時や内臓に腫瘍や血管に閉塞がある時の外科的な処置、感染症にかかった時の抗生物質など、近代医療には他に変えられない価値があります。しかし、そんな近代医療においても治療を受けた後、症状に変化がなく満足感が得られないこともあります。
ところでフェイクについてです。ネットで話題となっている「AI」は万能のように考えられていますが、読売新聞の特集記事「明日への考(R6.1.7.)」によると、マルクス・ガブリエルという哲学の研究者が、自分の研究内容を教えて欲しいと書いたところ、かなりの間違いがあったそうです。
ネットによる情報は、新聞の発行部数を減少させる天敵のような存在なので、辛めの記事になるのかもしれませんが、ネットには仕組まれた意図的な情報が多数存在しています。いわゆる広告のようなものです。広告は消費者を自分の売りたい商品に誘引し購入してもらうという意図があります。新聞広告やテレビのCMは私たちがある程度慣れているために簡単に騙されることはありませんが、それでも健康食品に医師の推薦文が書いてあれば、効果への期待は倍増します。(これはハロー(後光)効果と呼ばれます。)
健康食品には医療的な効果はなく(あれば医薬品)、あったとしても日本ではそれを広告できませんので、分類的には伝統医療の範囲に入ります。アメリカでは洗口液(ピュオーラのような)に口内炎への効果を謳っていましたが、日本では「薬機法」の規定によりそれを謳うことはできません。医薬部外品であるピュオーラ洗口液(ノンアルコールではない方)は口内炎に抜群の効果があると自分の体験による感想から使用しています。
https://www.kao.co.jp/pyuora/mouthwash/
さて、ネット情報の問題点ですが、様々な「インセンティブ(報奨、奨励、刺激)」があることが事態をややこしくします。X(旧Twitter)の記事にもリプライされた数や広告が表示された数に応じて報奨金があるし、YouTubeでも広告単価×広告再生回数に応じた報奨金があるようです。そうなるとフェイクであろうがなかろうが、感情に訴えるようなタイトルや動画、文章をアップしてたくさんの視聴者を引き寄せるコンテンツにした方が有利です。
それ以外にも情報を一般の方に知ってもらいたいといった単純な欲求から情報をアップロードしている方もおられます。問題はこれらの情報が正しい情報かどうかが分からないことにあります。新聞記事においてすら間違った報道であったと後から訂正されるようなこともあり、誰が書いたのかわからないネットの情報を正しいかどうかの判断ができないまま信じてしまうことは危険を伴います。
伝統医療の施術も不安であれば、一旦は医師に相談されるといいと思います。命の危険がある状態で第一選択として伝統医療が選択され、患者が亡くなったことも報道されています。良い医師であれば、医療サービスの効率が落ちる部分と伝統医療の得意ゾーンを理解していて、伝統医療を競争相手とみなして施術を拒むことは無いでしょう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/06/post-10399_1.php
https://www.nhk.or.jp/minplus/0119/topic033.html
じゅこうさんでは、身体の状態を確認し、危険のない施術を提供しています。そして自分たちだけで患者様を抱え込むことは行っておらず、ほかの医療はもちろん、鍼灸、整体、整骨院などの並行利用もお勧めしています。セカンドオピニオンと言っていただけると嬉しいですが、サードでもフォースでも何でもいいので、身体のことでお困りであれば、わらにもすがる思いでいらしていただけると嬉しく思います。わらはわらなりのお役目を果たすつもりでおります。
土曜日の午後にも非常に強い三叉神経痛を訴えて来院された高齢の男性がおられました。日常生活に影響を与えるような痛みでは、まず医療機関に紹介し判断を仰ごうと思いましたが、医療機関はすでに閉まっていました。連休明けの明日、火曜日に地域医療連携室を通じて紹介しようと思います。でも、地域医療連携は、鍼灸や整骨院からの紹介を嫌がるんです。それには大人の都合があるようです。
じゅこうさん 木下広志