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自然環境とネオニコチノイド系殺虫剤

出典:『新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間』NPO法人代ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議

私は京都で生まれましたが、小学校に入学と同時に岡山県都窪郡清音村に引っ越してきました。ご存じの方もおられると思いますが、清音温泉と呼ばれた3軒ほどの温泉宿の集落にある鍼灸院が私の家でした。ここは山の中の、別の言い方でいえば自然豊かな、逆に自然しかないような土地で育ったので生活は自然とともにありました。水道は無く、山の水をコンクリートのマスに溜めて利用していましたが、雨が降るとその水は濁っていました。

京都にいるときには、小児喘息があり病院通いをしていたのですが、清音に行ったとたんに治ってしまったようです。昭和50年の清音には、80代のお医者さんがいて、木造の暗い部屋で診察をしておられました。小学生の時なのでそこの診療所に行くことはとても怖く、仮面ライダーに出てくる改造人間にされてしまうと恐れていました。

さて、そんな山の自然環境に育ったので環境汚染について興味を持ち、レイチェルカーソンの沈黙の春や有吉佐和子さんの複合汚染などを読んできました。寿晃整骨院のブログには、2016年にマイクロプラスチックの環境汚染について、また2020年にはレジ袋の有料化について書かせていただいたことがあります。

このプラスチックが海洋環境を汚染していることは間違いないのですが、プラスチック海洋放出のうち、ビニール袋による量は微々たるもので、排出しているプラスチックの多くは魚を取る漁師さんの漁具です。

また海洋環境汚染に大きな影響を与えているものの中にタンカーや貨物船に塗られている塗料があります。これは船底にフジツボが付いて船の速度が落ちることを防いでいますが、毒性のある成分として1990年代までは有機スズが使用されてきました。これは環境ホルモンなどともいわれ、メスの貝にオスの特徴が現れたりしました。生き物が生活できない環境にする成分なので毒性は強いですよね。いまでも大きな港の底の泥にはたくさんの有機スズ成分が検出されるそうです。

さて、いつも長々と脱線するのですが、現在問題となりそうなのが、ネオニコチノイド系殺虫剤です。この殺虫剤は昆虫に対して強い神経毒性を持ち、脊椎動物であるヒトには安全とされて、農業を始め家庭用の害虫駆除剤やペット用に幅広く商品展開が行われています。2018年にEUは登録ネオニコチノイド主要5種の内3種を使用禁止し、フランスは主要5種全てを禁止したそうです。さすが農業国フランスです。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/080800467/

以前、全身の力が抜けるという訴えで患者さんが寿晃整骨院に来院されたことがあります。神経的な脱力という症状は寿晃整骨院の業務範囲ではないと判断し、大きな病院に紹介、検査のため入院となりましたが、原因は解らずそのまま落ち着くのを待って退院となりました。この患者さんは農家の方でその時に使用されていたのが、ネオニコチノイド系殺虫剤でした。この殺虫剤は昆虫の中枢神経に効き、脊椎動物への副作用な少ないとされていますが、農薬の副作用によって中枢神経系に悪影響が出たのではないかと今でも疑っています。

宍道湖ではワカサギ漁獲量が激減しました。その理由として川から流入する砂の問題や、一部の人たちは外来種のブルーギルやブラックバスによる捕食が原因としたいようですが、主たる原因としてネオニコチノイド系殺虫剤が疑われています。宍道湖では季節になると大量のユスリカが発生していましたが、照明のある場所や壁に大量のユスリカが集まり、スリップ事故などが起こり、これはこれで問題でした。しかし、この大量のユスリカの幼虫は豊富なエサとなり、ワカサギの水揚げにつながり、宍道湖の漁師の生活を支えていました。湖周辺の農地でネオニコチノイド系殺虫剤が使用されたころからユスリカの発生が激減してしまいました。ネオニコチノイドは水溶性で水によって遠くに運ばれます。東京大学の山室真澄教授が2019年に科学雑誌サイエンスに投稿した論文ではワカサギの激減は殺虫剤が原因ではないかと発表されています。

日本でも、近いうちにネオニコチノイド系殺虫剤が農地に使われることは規制対象となると思いますが、皆さんが飼われているペットに使うフ○○トラインというノミ・ダニの薬もネオニコチノイド系殺虫剤です。よく効くのですが、自然環境にどのような影響を与えるのかわからないのが怖いところです。ちなみに哺乳類の脳には蓄積するというデータがあります。知り合いのシロアリ駆除の業者さんは「うちの防虫剤は飲めるくらい安心な薬です」と言っていましたが、最後はお漏らしが止まらなくなり、若くして亡くなってしまいました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/toxpt/45.1/0/45.1_S5-2/_article/-char/ja/

大きな環境破壊は、何らかの産業によって起こってきました。虫は毒を持っていたり感染症を引き起こしたりすることもあるので一緒に暮らすというわけにはいきませんが、安易に薬によって退治してしまうと人間にもしっぺ返しがやってきそうです。アインシュタインは「ミツバチがいなくなると人類は滅びる」といった言葉を残したともいわれています。レイチェルカーソンが書いた沈黙の春も生き物の気配がない死の環境について書き始めています。

このような安易な殺虫剤による環境破壊は、農作物の受粉を助けたり、エサとなる動物プランクトンや昆虫に影響を与え、突如として人間の食料が足りなくなるかもしれません。アイルランドではジャガイモ飢饉と呼ばれるジャガイモの感染症により、4年間で20~25%の住民が亡くなりました。食料の問題は戦争の可能性を増大させ、人の命への危険から言えば、原子力発電などよりも何倍も危険な脅威となるかもしれません。

じゅこうさん 鍼灸施術スタッフ 木下広志